shantipapa’s blog

私の人生の記録です。節約、Apple、代替医療、瞑想など

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旅日記6 バラナシ3日目 アンジェロ宅訪問

昨晩のかなりひどかった腹痛も、薬を飲んで寝たら、朝にはだいぶよくなっていた。発熱も下がったようだ。長引いたり、重症化しなくて良かった。

夕方から横になっていたので、身体のあちこちが固まってしまっている。私はガンガーが眺められるバルコニーにでて、固くなった身体をほぐすように動いたり、伸ばしたりした。

そうだ。太極拳をしてみよう。ガンガーを見ながら心を静め、両の脚を肩幅くらいに開く。重心をやや落とす。余分な力を抜く。起勢。

無為寺で習った太極拳も、日本で習った双辺も套路は忘れてしまった。でも、太極拳的な身体の動きは身体が覚えている。動きを思い出しながら、身体が動くままに動かしてみた。昔、旅をしながら毎日行っていた太極拳

無為寺で太極拳を修行した経験は、私の人生にかなりの変化を及ぼしたと思う。私は太極拳の魅力に魅せられた。お寺での生活の中、自分の内に力が湧いてくる感覚を実感として感じられた。そんな経験がきっかけとなり、自分を元気にすること、そして人を元気にすること。そんなことを追求するようになり、手技療法の世界に入っていった。太極拳はもう何年も前にやめてしまったけど、手技療法はプロとなり、いまでも追求を続けている。

私は再び太極拳をやってみたいと、このとき強く思った。つぎに習うとしたら、一番メジャーな陽式がいいかな。時間はかかるだろうけど、きちんと修めて人に指導できるくらいになりたい。手技療法と瞑想、そして太極拳。そんな世界を融合していくのが私の夢だ。

ケーダルシュワールは、Bed and Breakfast、つまり朝食付きゲストハウスだ。朝ごはんは妻も私もバナナパンケーキを頼んでみた。インドのパンケーキは日本でいうクレープに近いもののようだ。なかにバナナがどっさり入っていて、たっぷりのハチミツをかけて食べた。昨晩の腹痛のこともあるので、慎重に良く噛んでゆっくりと食べた。

朝食を食べて、しばらくしてもお腹の具合は落ち着いている。どうやら大丈夫そうだ。私はアンジェロに電話をかけた。昨日、せっかく自宅に招いてもらったのに、突然の腹痛で行けなくなってしまった。今日はもう大丈夫になったので、ぜひ伺いたいと伝えた。アンジェロは快く承諾してくれ、今晩のアンジェロ家訪問が決まった。

今日はあまり積極的な観光はせず、のんびり過ごすことにした。午前中は部屋のなかで音楽を聴いたり、バルコニーでガンガーを眺めたりしていた。妻は両親にAirmailを書いていた。 私はその間、小沢健二の「僕らが旅にでる理由」を何度かリピートして聴いた。

そして毎日はつづいてく 丘を越え僕たちは歩く
美しい星におとずれた夕暮れ時の瞬間
せつなくてせつなくて胸が痛むほど

この曲のこのフレーズが好きだ。17年前、私は大阪発の船に乗り、上海へと降り立った。そして陸路を西へ西へ、チベットを超え、ネパール。インド、パキスタン、トルコとアジアを横断した。西へ西へ移動していたので、太陽の沈む方向に向かうことが多かった。インドやパキスタンでは日本ではあまり見られない地平線に沈む太陽を見られる場所が多い。あれはパキスタンでバスに乗っていた時だった。ものすごく大きな夕日にむけてバスは走っていた。いつか自分に子供ができたとき。世の中にはこんな大きな夕日があるんだということを見せてあげたいと思った。そんな懐かしい想い出を振り返りながら、オザケンを聴いていた。しみじみと。何度もリピートして聴いていたら、妻に「この曲聴きすぎて飽きたんだけど」と言われてしまった。

お昼前くらいに、私達は街に散歩にでた。まずは郵便局に行き、妻が先程バルコニーで書いた手紙を投函した。 ベンガリートラ・ロードを歩き、ダシャーシュワメート・ガートへと出た。ガンガーを眺めていると、心がすっと落ち着いてくる。それはこのバラナシが特別な場所だからであろうか。それとも、単にそういう風に感じたがっているだけであろうか。わからない。でも、心が静かになっていくのを感じる。

少しお腹がすいてきたので、バラナシでも評判の良いドーサ・カフェというお店に行ってみることにした。妻は、私が昨晩あんなにお腹が痛くて苦しんでいたのに、スパイシーなインド料理を食べて大丈夫?と心配していたが、スパイシーなソースをあまりつけなければ大丈夫だろう。ただ、食堂の生水だけは飲まないようにしようと心に誓った。

注文したのは クリーミーマッシュルームドーサと トマトオニオンウタッパム

このお店は使う油にもこだわっていて、油を大豆油、バター、ギー、オリーブオイルの中から選ぶことができる。私達はギーを選択した。ギーとは発酵無塩バターを煮詰めて水分やタンパク質を取り除いてできる油で、独特の風味がありインド料理には欠かせない存在。料理はもちろん、アーユルヴェーダや宗教儀式でも使われる。

食べてみると、重ったるい油っぽさはなく、風味豊かでとても美味しい。評判のお店であることも頷ける。

さて、また現地SIMの話をしよう。このDosa Cafeはトリップアドバイザーで見つけたお店だ。宿やCafeではWifiが使えることもあるが、接続がわるかったり、速度が遅かったりすることも多々ある。SIMフリー機に現地SIMであるAirtelのSIMを刺すことにより、いつでも何処でも地図をみたり、ルート検索したり、良いお店を調べたりできる。もちろん街を歩いて、自分の直感に基づいて美味しいお店を探すのも良いだろう。歩いて歩いてお店を選び、頼んだ料理がとても美味しかったとき、喜びが脊髄を駆け上るような感覚。素敵なことだ。

だが、私はこの旅行を通して、現地SIMを購入し、手持ちのiPhoneで使うことへの利便性に酔いしれていた。日本の普段の生活では当たり前のことだ。モバイルでネットにアクセスすることなんて、もはや本を読むことよりみんなが行っている。だが、海外を旅する環境においては、その当たり前が失われる。その不便さのなかで楽しむことに意義を見出すこともできるかもしれない。だがかつてのバックパッカー経験と比較して、旅先でiPhoneがそのまま使えるのはつくづく便利だと思う。あとは使いようだ。

旅にでてまでiPhoneばっかりなのもどうかと思う。なので、私はマインドフルネスをお勧めする。ふとしたときに、iPhoneを見るのをやめ、思考もとめ、今の瞬間を感じる。そのままを観て、そのままを聴く。そうすると、本当の今がだんだん見えてくるように思える。私たちはふだん、過去のことを思い出してばっかりいるか、未来のことを妄想しているばかりで、本当の今から心が離れていることが多いと思う。呼吸を感じ、今にこころを向けると、美しいものがより美しく見えてくる気がする。

SIMの話からマインドフルネスの話になってしまった。アンジェロとの奇跡的な再会をしたからか。いろいろなことを思い出し、考えが浮かんできた。思考にとらわれ始めていることを知り、思考を手離す。クリーミーマッシュルーム・ドーサの味に集中をしよう。

ドーサ・カフェをでた私達は、ベンガリートラ・ロードを歩き、宿へと向かった。帰り際、妻は目にはいったお気に入りのデザインのワンピースを購入。インド人の旦那さんと日本人の奥さんが経営するお店で、日本人相手だと値段交渉はしにくかったらしい。下の写真はここのお店のご主人と近所のおじいさん。おじいさんがとっても良い笑顔で赤ちゃんに話しかけていた。

宿に戻ると、オーナーのミントゥさんがいたので、昨晩お世話になったお礼を言っておいた。ミントゥさんが日本語を話せるおかげで、医者にも症状を的確に伝えることができたし、なにより妻にとって心強かったであろう。

その後は、夜からのアンジェロ家訪問まで、のんびりと過ごして体力を温存した。

日も暮れ、私達は外に出てオートリクシャーをつかまえて、アンジェロの家に行った。リクシャワーラーは指定した場所をよくわかっていなかったので、私がiPhoneのグーグルマップをみながら曲がり角を指示した。アンジェロに聞いた住所は集合住宅が多く、どの建物かわからなかったのだが、電話したらすぐにでてきてくれた。何度も言うが、海外で普通に携帯やマップなどが使えるのは便利だ。

アンジェロ家はアンジェロ、奥さん、男の子と女の子の4人家族だ。アンジェロはフランス人、奥さんは中国人、子供達はここバラナシでインドのローカルスクールに通っている。なのでヒンディー語も子供達は話せる。通常アンジェロと奥さんは中国語で話をしている。つまり、フランス語、中国語、英語、ヒンディー語と4ヶ国語が日常的な生活で使われている。 おまけに奥さんは昔北京で日本人ツアーのガイドもしていたとのことで、日本語の日常会話もできる。すごいことだ。

子供達もとても聡明そうだ。遊びも五感をつかった自由な遊びを楽しんでいる。ドミノ倒し、工具をつかった工作のおもちゃ、神経衰弱、ボード型ビリヤードなど。ここにはテレビゲームもないし、スマートフォンで子供があそぶこともない。良い子育てをしていると感じた。とても素敵なエネルギーに満ちた家族だ。

私達はいろんな話をした。無為寺の話、その後の人生の話。これからのこと。いろんなこと。 それぞれの人生の中で、たまたま巡り合わせがかさなり、タイミングがあい、雲南省のお寺へと向かった。 そこで、同じ景色をみて、同じ飯をたべ、修行をした。

そして、寺を降りて、またそれぞれの人生をそれぞれで進んでいった。そしていま、また波長がシンクロし、再会を果たした。15年という時の流れは、ごく短いようにも思える。その間にもいろんなことがあった。でもアンジェロとの関係性においては、あっという間なのかもしれない。魂のレベルでは、私達は時空を超えてつながっているのかもしれない。

いまの段階でわかるのは、そんな考えも妄想にすぎず、なにが本当なのかもわからない。ただ、この旅を通じて、アンジェロに再会できたという事実。そのことに心から感謝したい。

またバラナシに来る。奥さんや子供達に再会を誓い、私達はアンジェロ家を後にした。アンジェロは通りまで私達を見送ってくれた。

最後にホットミルクを一杯のんだ。カルダモンとともに煮詰めたミルクはとても濃厚で美味しかった。私は最後にアンジェロとハグをした。

私達はオートリクシャーに乗り込み、アンジェロは家族のまつ家にもどっていった。

日本での日常。いろんな人間関係。そんななかで少し見失いかけていた大切なものを取り戻すことができたような気がする。 また、ここにこよう。大切な友と会うために。 私が私であるために