旅日記8 アーグラー・タージマハールはやはり壮大だった
私達の乗った14863 Marudhar Expressは時刻表によれば6時10分に到着予定だったが、二時間ほど遅れてAgra Fort駅に到着した。
駅の外にでて、まずはチャイを一杯。移動で少し疲れた身体にこの甘いチャイがしみわたる。
さて、宿であるがアーグラー滞在は1泊と短いのでタージマハルに近い宿という条件で、ホテルカマルを候補にした。駅前よりオートリクシャーにのって目的の宿であるホテルカマルへとやってきた。
リクシャーワーラーは、私達に一日観光を執拗に勧めてくる。アーグラーの主な観光スポットをまわってくれるのだが、私達は自分たちのペースでのんびり観光がしたい。断っても、しつこく勧めてくる。結局、宿のレセプションまでついてきて、ずっとツアーに行かないか?と宣伝してきていた。
今回のインド旅行で発見したのだが、物乞いでもリクシャーでも、しつこく付きまとわれたときには合掌か有効だ。合掌して丁寧に少し頭を下げて断ると、相手も諦めてくれる。とても有効なので、ぜひ試してみてほしい。くれぐれも下品な追い返し方はしないでほしいなと願っている。偉そうだが、彼らにも生活があり、売り上げをあげたいのだ。ここは彼らの国であり、私達は旅行させていただいている。そんな気持ちを忘れずに私は旅をするように心がけている。
部屋は新館のちょっといい部屋にした。まだ9時くらいだったのだが、部屋も空いていてもう使っていいというので、部屋に入り、肩から荷物を降ろした。新しい街にうつり、部屋を決め、荷物を降ろす。旅をしていれば当たり前のそんなことが、とても心地よい。30分ほど身体を休めて、このままタージマハル観光に行くことにした。アーグラーは一泊二日。タージマハルは明日の朝一に行くプランも少し考えたのだが、勢いで今日見てしまおうということになった。素晴らしくてもう一度みたくなれば、また明日行けばいいだけだ。
ホテルカマルからタージマハル南門までは歩いて5分くらい。南門へ向かう道沿いにはたくさんのお土産屋があり、タージマハルのミニチュアや大理石の小物などかたくさん売っていた。
チケット売り場でチケットを購入。外国人価格で750ルピーとなかなかの値段だ。チケットを買うとペットボトル入りのお水と、靴袋がついてくる。気をつけたい点として、タージマハルは持ち込みが禁止されているものが大変多いということがある。例えば飴、ガムなどのお菓子、ジュース、タバコ、ライターなど。世界遺産であるタージを汚す危険のあるものは持ち込み禁止となっている。カメラやモバイルはオッケー。余計な荷物は宿に置いてくると良いと思う。
手荷物検査はけっこう厳重で、カバンの中もきちんとチェックされる。といっても、手荷物検査があるということは知っていたし、余計なものも全て置いてきてあるので、すんなり終わった。
手荷物検査を終えて敷地内にはいるとまず見てるのが赤いメインゲート(大楼門)だ。まだここからはタージは見えない。
このメインゲートをくぐる。光の向こうに白亜のタージマハルが姿を現わす。
そして、メインゲートを通り抜けると、目の前にタージマハルが全貌を明らかにする。
なんという美しさであろうか。妻が見たいと願っていたタージマハル。人生の伴侶とともにここを訪れることができた喜びを圧倒的な美しさとともに味わった。
タージマハルの美しさには言葉は要らない気がする。 人類の宝と言っても良いだろう。遠くからみると真っ白に見えるタージマハルも、近くでみると実に様々な模様が描かれている。壁を彩る幾何学的模様。そして細部を彩る植物の模様。
これは象嵌という手法で作られた模様で、大理石に色石を嵌め込み磨いて模様を浮き出させてある。赤い花弁は光を通す石で、タージマハル内部の暗いところでこの赤い花にペンライトを当てると光って浮かび上がる。
遠くからみて完璧な美しさを誇るタージマハルは、細かいところの美においても妥協がなかった。
じっくりとタージマハルの美しさを堪能した私達は、木陰のベンチで少し休んだ。この時期のインドは暑くない。移動の疲れとタージ観光の満足感が混じりあう。心地よいそよ風が抜けていった。私達はしばし、タージマハルを眺めながら、ぼ〜っとした時間を過ごした。
妻との結婚前、まだ出会ったばかりの頃。初デートは都内の少しだけ高いインド料理店に行った。その後公園に行き、旅の話、インドの話などをした。妻はもともとヨガを行う人だったので、興味を持って聞いてくれた。「いつかタージマハルを見に行きたい」とその時妻は言った。連れて行ってあげたいな。インドだけではない。世界中のいろんなところに。そんなことを言ったことを思い出す。まずはひとつ。約束を果たすことができた。
さて、時計をみると、11時近く。お腹もすいてきたので、タージマハルを後にして少し早いがご飯を食べることにした。宿の近くのSankara Vegis Restaurantがトリップアドバイザーの評価が高かったので、行ってみた。このレストランは屋上でタージマハルを眺めながら食事ができるのも売りのひとつだ。
こんな感じで遠くにタージが見える。タージ観光の興奮の余韻を味わいながら料理をたべるのもなかなか良い。 料理もなかなか美味しかった。日本でインドの話をすると「インドは本当にカレーばっかりなの?毎日カレーであきないの??」と言われることもあるが、私は毎日でも平気だ。ほとんどすべての料理にスパイスが使われているが、スパイスのハーモ二ーを楽しめるようになると、インド料理が本当に好きになってくると思う。あと、ダル(豆のスープ)の旨さに気がつくと、もうインド通でしょう。
食事を終えて、宿に戻った。移動のつかれも残っていたので、シャワーを浴びて、少し仮眠をとった。二時間ほど寝ただろうか。
夕暮れ時には、ぜひ河の反対側からタージを眺めたい。私達は再び宿をでて、ヤムナー河の対岸にあるイティマド・ウッダウラー廟 (Itmad-ud-Daula) とメフタブ・バック (Mehtab Bagh) に行ってみることにした。
まずついたのは、イティマド・ウッダウラー廟。ムガル帝国の第4代皇帝ジャハーンギール帝の妃ヌール・ジャハーンがその父母のために1628年に建てたものだという。
タージマハールよりはるかに小さいが、象嵌細工がとても美しい。この小ささと美しさが相まって、この場所がとても愛らしい存在のように思えてくる。
建物の中は、ふたつの棺が並んでいた。タージマハールも、ここイティマド・ウッダウラー廟もお墓なのだ。
このふたつの棺は、とても暖かい存在のようにおもててくる。柔らかい光が差し込んでいる。美しい場所だ。
イティマド・ウッダウラー廟は夕陽スポットを訪れる途中になんとなく立ち寄ってみた場所だったのだが、こんな素敵な場所だとは思ってもみなかった。アーグラーに来たら、是非立ち寄ってほしいオススメの場所である。
さて、夕暮れ時も近づいて、締めくくりはやっぱり夕焼け空に映るタージマハールを見たいということで、メフタブ・バックへ向かった。
ここメフタブ・バックは、タージマハルからヤムナ河を挟んで向かいあるところで、ここには黒いタージマハルが建築される予定だった場所だ。タージマハルはムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンの妻ムムターズ・マハルのためお墓で、その向かいに黒い自分のお墓を建てようとしていたのだが、失脚してしまい、黒タージマハルの計画は幻に終わったのだという。
毎日日が昇り、そして沈んでいく。普段仕事に追われ、生活に追われていると、なかなか夕陽を見ることも少ないし、気にをかけないことも多い。仕事も生活ももちろん必要であり大切だが、たまにこうして夕陽を眺められる時間も大切にしたいなと思う。
観光を終えた私達は、アーグラー市内にもどって、晩御飯を食べる場所を探すことにした。
今日はチャパティ(少し小ぶりの発酵さえていないナン) にこだわって食堂を探してみることにした。判断基準はタンドールがあること。フライパンでもチャパティは焼けるが、やっぱりタンドール(釜)で焼いたチャパティのサクサク感は格別だ。
道沿いにあるローカル食堂を5件ほど見てみたが、タンドールを備えているところはなかなか見当たらない。もうこの近辺ではないのかなぁ。などと思って歩いていた。
インドではとにかく良く声をかけられる。お土産屋、リクシャーワーラー、そして只話したい人など。ちょうど若い兄ちゃんに、「ハロー。何か探しているの?」と声をかけられた。タンドール・チャパティを探していると答え、練って広げたチャパティの生地をタンドールの内側に貼り付ける動作をしてみた。すると通じて、「タンドール・ロティ!」と兄ちゃんは言った。ロティとはチャパティのこと。 「Come !」とすぐ近くの食堂に案内してもらった。お店の中にはタンドールは見当たらない。タンドールを見せてくれと言ったら、奥の厨房に案内してくれた。
そうそう。これこれ!このタンドールで焼いたチャパティが格別なのだ。
「お前もやってみるか?」と、妻にタンドール焼きをチャレンジしてくれた。手で生地を伸ばして、専用の枕に生地をのせて、タンドールの内側に貼り付けます。しばらくして焼けたら金属製の先がフックになった棒で引っ掛けてチャパティを取り出す。妻にとって思い出に残る良い経験となったと思う。
メニューは、オクラのスパイス炒め(ビンディーマサラ)、Stuffed tomato (Bharwan Tamatar) 、そしてせっかくタンドールがあるので、タンドリーチキンを頼んでみた。
味は満足。やっぱりタンドールで焼いたチャパティは美味しい。表面のサクサク感がありつつ、中はふっくらさを残している。たまらない。
あとここのお店で美味しかったのはStuffed tomato だ。他のカレーより少し高いのだが、手が込んでいて美味しい。今晩の食事は大変満足の行くものであった。
その後、食堂をでて、宿まで歩いて帰った。2kmほど離れていたが、グーグルマップさんに案内してもらい、迷うことなく帰ることができた。
宿にもどり、ほどなくすると観光の疲れもでてきてぐっすりと眠りについた。